昔ながらの等級号俸制の賃金表では、昇進(等級のアップ)と、昇給(号俸のアップ)による給与額が決められます。

しかし、中小零細企業を見てみると、等級号俸制などの賃金表では、本来の設定してあるはずの給与額が、各人ごとに変更されている場合が見受けられます。
 なぜそのようなことが起こるかというと、景気が良い時に採用した既存の社員と、不景気な時に採用した中途採用者でのバランスが壊れているからです。その不合理を少しでも整合的にしようとして、無理をするためそのようなことが起きています。

 体系の作り方も一つ問題があります。基本給と諸手当(家族手当・住宅手当)などの形で支給されている会社では、基本給の中に仕事部分が含まれており、業務ごとの明確な定義づけが行われておらず、号俸の金額でしか差をつけることができない為です。そのため不合理が分かっていてもどうすることもできないまま、現状維持を行っている場合があります。

また違う点では、年功序列の賃金体系を採用しているため、同じ年で、同じような仕事内容をしているのにも係わらず、入社時の時期がすこしズレただけで金額が大幅に違ってきたりなど実際に悩んでいる会社もありました。

さらに昔からあるコンピテンシー評価や360度評価もありますが、中小零細企業では、そういったものを導入することでどれほどの費用対効果があるのでしょうか?

コンピテンシー評価では評価する社長が、モデルとなるような人格者であれば問題はありませんが、もしそうでない場合(そうでない場合が多い)はどうなるのでしょうか?

また、「だれが」「どのように頑張った」そしてその結果として給与額はどのように変化するのか?ということが全くブラックボックスとなっています。
何ヶ月もかかって人事評価を行ったあと、給与額が微増減する場合、経営全体からみた効果はどれほどあるのか疑問です。
また高額な人事評価システムを導入してみたものの、難しくて経営者が従業員に説明できないものができあがってしまう。という悲しい事例もありました。

さらに最近は、同一労働同一賃金が声高に叫ばれています。同じ仕事をしているのに、最初のテーブルから違う等級号俸制などの賃金表(基本給中心の給与体系)とリンクした人事評価(人事考課)を行うことは中小零細企業では、必要なのでしょうか?

 人はいつ、不満や不信感を抱くのでしょうか?1人1人の社員は、公平に処遇されたいと願っているのではないでしょうか?例えば、貢献度の高い人が高い給与をもらうことには不満はないでしょう。しかし、貢献度に見合わない高い給与をもらっていれば不満・不信感の原因になるのではないでしょうか?

 その高い給与に見合うだけの仕事内容を見つけ、手当として設定することは、給与設計での重要な働きの一つなのです。
 貢献度においても、その目的、たとえば生産性向上といった経営の本来的命題に対して、人格評価はどのように結びつくのでしょうか?大企業と違って1年・1ヶ月先が不安定・不確定な中小零細企業においては、コンピテンシー評価や等級号俸制による賃金体系は、あまり適した制度とは言えないと思えるのです。